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企業版ふるさと納税を通じた地域と企業の共創:事業推進の具体的なアプローチ

Tags: 企業版ふるさと納税, 資金調達, 行政連携, 企業連携, 地域事業

地域創生事業を推進する上で、資金の確保や多様な主体との連携は常に重要な課題となります。補助金や助成金に加え、近年注目されている資金調達手段の一つに「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)」があります。

この制度は、企業が認定された地方公共団体の地方創生事業に対して寄附を行った場合、税制上の優遇措置が受けられる仕組みです。地域にとっては新たな資金源となり、企業にとっては社会貢献活動(CSR)や共有価値創造(CSV)の推進、企業イメージ向上に繋がる可能性があります。しかし、単に寄附を募るだけでなく、いかに企業との連携を深め、共に地域事業を推進していくかが重要となります。

企業版ふるさと納税の概要とその意義

企業版ふるさと納税は、国が認定した地方公共団体の地方創生事業に対して企業が寄附を行うと、寄附額の最大9割が法人関係税から控除される制度です。企業は実質的に寄附額の1割の負担で社会貢献が可能となり、地方公共団体は事業に必要な資金を確保できます。

地域プレイヤー、特にNPOや地域事業者がこの制度を活用するためには、まず自身が関わる事業が地方公共団体を通じて制度の対象となる認定事業として申請・採択される必要があります。このプロセスには、行政との緊密な連携が不可欠です。また、企業に寄附を検討してもらうためには、事業の意義や社会的インパクトを明確に伝え、企業の経営戦略や社会貢献の方針と合致する点を提示する必要があります。

企業版ふるさと納税を活用した事業推進のポイント

企業版ふるさと納税を単なる資金確保の手段としてだけでなく、地域と企業が共に地域課題解決に取り組む「共創」の機会と捉えることが成功の鍵となります。

  1. 魅力的な事業計画の策定:

    • 企業が共感し、投資したいと思えるような、地域課題解決に明確に貢献する事業計画を策定することが重要です。
    • 事業の目的、内容、実施体制、期待される効果(定量的・定性的な目標)を具体的に記述します。
    • 特に、事業が企業のCSR/CSV活動のテーマ(例:環境、教育、福祉、地域活性化など)とどのように連携できるかを示すと、企業の関心を惹きやすくなります。
  2. 行政との連携強化:

    • 企業版ふるさと納税の対象事業として認定を受けるためには、地方公共団体を通じた申請が必要です。日頃から行政担当者と積極的にコミュニケーションを取り、制度の活用について相談を進めることが欠かせません。
    • 行政は、制度の周知、企業への情報提供、寄附受け入れ窓口としての役割を担います。行政との連携を通じて、企業のニーズや関心に関する情報を得ることも可能です。
  3. 企業とのコミュニケーションと共創関係の構築:

    • 単なる資金提供のお願いではなく、企業の担当者と対話を重ね、事業への理解を深めてもらうことが大切です。
    • 企業の持つ技術やノウハウ、人材などを地域事業に活かす可能性についても検討し、資金提供以外の形での連携(プロボノ、共同でのイベント実施など)も提案することで、より強固な共創関係を築くことができます。
    • 寄附後も、事業の進捗状況を定期的に報告し、成果を共有することで、企業との信頼関係を維持・強化します。

事例に学ぶ成功のエッセンス

成功している事例を見ると、多くの場合、地域側(地方公共団体、地域プレイヤー)が以下の点を意識しています。

課題と今後の展望

企業版ふるさと納税の活用においては、企業の関心をいかに引き出すか、複数の企業からの寄附をどのように積み上げるか、行政手続きを円滑に進めるかといった課題も存在します。また、寄附が単年度で終わらず、継続的な関係に繋げるための努力も必要です。

これらの課題を乗り越えるためには、地域プレイヤー、行政、企業がそれぞれの強みを活かし、共通の目標に向かって知恵を出し合う共創の姿勢が求められます。企業版ふるさと納税は、地域が必要とする資金を呼び込むだけでなく、地域と企業が新たなパートナーシップを築き、共に持続可能な地域づくりを進めるための一つの有効なツールとなり得るでしょう。

皆様の地域では、企業版ふるさと納税を活用した事業推進について、どのような可能性や課題を感じていらっしゃるでしょうか。また、企業との連携を通じて地域事業を成功させた事例があれば、ぜひ共有いただけますと幸いです。