創生アイデア交換広場

地域事業の「稼ぐ力」を高める多角化戦略：安定運営への新たな一歩

地域事業の持続可能性を高めるために：収益多角化という視点

地域創生に取り組む多くのプレイヤーや行政担当者の皆様は、事業資金の確保や継続的な運営に課題を感じていることと存じます。特に、特定の助成金や単一の事業収入に大きく依存している場合、外部環境の変化が直接的に事業の継続を脅かすリスクを抱えることになります。

安定した事業運営を続け、地域への貢献度を高めていくためには、「稼ぐ力」を高め、収益源を多様化させる「多角化戦略」が有効なアプローチの一つと考えられます。今回は、地域事業における収益多角化の考え方とその実践に向けたヒントをご紹介いたします。

なぜ地域事業に収益多角化が必要なのか

地域事業は、その公益性や社会課題解決の側面から、寄付や助成金、補助金に支えられる部分が多くあります。これらは事業立ち上げや特定プロジェクトの推進において非常に重要な役割を果たします。しかし、これらの外部資金は恒久的なものではなく、応募時期や採択状況に左右される不安定な側面も持ち合わせています。

また、単一の事業収益（例：特定商品の販売、特定イベントの開催など）に依存している場合、その事業を取り巻く環境（市場の変化、競合の出現、参加者の増減など）の変動が、組織全体の財政基盤に大きな影響を与えてしまいます。

収益源を複数持つことは、一つの収入が減少した場合でも他の収入で補うことができるため、組織全体のレジリエンス（回復力）を高め、より安定した事業運営を可能にします。これは、長期的な視点で地域に貢献し続けるために不可欠な考え方です。

地域事業における収益多角化のアプローチ

収益多角化と一口に言っても、そのアプローチは様々です。自組織の持つ資源や強み、地域特性を踏まえて、どのような方向性があるのかを検討することが重要です。

1. 既存事業の深化・展開

   • 関連商品の開発・販売: 例えば、地域の伝統工芸を伝える活動をしている場合、その工芸品そのものだけでなく、材料キット、関連書籍、デザインを活かした雑貨などを開発・販売する。
   • 有料プログラムの導入: 無料で行っていたワークショップやセミナーに、より専門的・高度な内容や個別相談を組み合わせて有料化する。地域の自然体験活動で、特定のスキル習得コースを有料で提供するなど。
   • コンサルティング・研修事業: 組織運営や特定分野（例：地域ブランド構築、多言語対応）で培ったノウハウを行政や他の団体向けに提供する。

2. 新たな事業分野への参入

   • 地域資源を活用した物販: 地域の特産品、加工品、オリジナルの地域グッズなどを開発・販売する。オンラインストアやふるさと納税の返礼品として展開することも考えられます。
   • 教育・体験観光: 地域ならではの歴史、文化、自然を活かした体験プログラムや、子供向けの学習プログラムなどを企画・実施する。
   • 遊休資産の活用: 地域内の空き家、古民家、耕作放棄地などを活用した宿泊施設、飲食スペース、レンタルスペース、体験農園などを運営する。 (※これは遊休資産活用のテーマとも重なりますが、収益多角化の一環として捉える視点です)
   • メディア・情報発信: 地域情報サイトの運営、フリーペーパーの発行、動画制作などを通じた広告収入や有料コンテンツ配信。

3. 多様な資金調達手法の組み合わせ

   • 会員制度・サブスクリプション: 事業内容に共感する支援者や利用者を募り、継続的な会費収入を得る。特典を付けることで参加を促す。
   • クラウドファンディング: 特定のプロジェクト資金を募るだけでなく、返礼品として地域産品を提供することで、商品のテストマーケティングや新たな顧客獲得にも繋げる。
   • 企業との連携: 企業のCSR活動や本業を通じた連携により、資金提供だけでなく、共同事業開発やプロボノ支援を受ける。
   • ふるさと納税連携: 地域の魅力的な返礼品を開発し、ふるさと納税サイトを通じて全国からの寄付を募る。

実践に向けたヒントと課題

収益多角化を進める上で重要なのは、自組織のミッションやビジョンとの整合性を保つことです。単に「儲かりそうだから」という理由で始めるのではなく、本来目指している地域の姿にどう繋がるのかを常に意識する必要があります。

• 地域資源・強みの棚卸し: 自地域にどのような魅力的な資源があるか、自組織にはどのようなノウハウや人的ネットワークがあるかを改めて洗い出すことから始めます。
• ターゲット顧客の明確化: 誰に対して、どのような価値を提供する事業なのかを具体的に定義します。
• スモールスタートで試す: 最初から大きな投資をするのではなく、小さく実験的に事業を始めてみることで、リスクを抑えつつ市場の反応を見ることができます。
• 外部連携の活用: 不慣れな分野に挑戦する際は、その分野の専門家や経験を持つ他の団体と連携することも有効です。
• 多角化によるリソース分散: 新しい事業を始めるには、人手や時間といったリソースが必要です。既存事業がおろそかにならないよう、計画的に進める必要があります。

収益多角化は容易な道ではありませんが、地域事業の安定と発展のためには避けて通れない重要なテーマです。多角化によって得られた収益を本業である地域貢献活動に再投資することで、活動の幅を広げ、より大きな成果を生み出す好循環を生み出すことが期待できます。

終わりに

地域事業における収益多角化は、持続可能な活動の鍵となります。皆様の団体や地域の状況に合わせて、どのようなアプローチが可能か、ぜひ検討してみていただければ幸いです。

皆様の地域では、収益多角化に向けてどのような取り組みを行っているでしょうか。あるいは、どのような課題やアイデアをお持ちでしょうか。ぜひ、コメント欄で皆様の経験や考えを共有し、この「創生アイデア交換広場」で共に学び、より良い地域創生を目指していきましょう。