地域活動の担い手不足解消へ:育成と外部連携による人材確保のヒント
地域創生事業を推進する上で、避けて通れない大きな課題の一つに「担い手不足」があります。熱意ある地域プレイヤーや行政担当者が企画を進めても、実際に活動を担う人材がいなければ事業は停滞してしまいます。特に高齢化が進む地域では、この課題はより深刻です。
本記事では、地域活動における担い手不足という課題に対し、地域内で人材を「育成」することと、地域外から人材を「確保」することに焦点を当て、具体的なアプローチやそのヒントについて考えてまいります。
地域における担い手不足の現状と課題
地域創生に取り組む多くの現場から、「人がいない」「若い人が続かない」「専門スキルを持つ人が不足している」といった声が聞かれます。この担い手不足は、いくつかの側面を持っています。
- 人口減少・高齢化: 地域そのものの人口が減少し、特に活動の中心を担える現役世代や若者が少ない。
- スキルの偏り: 特定の分野(例えば、農業や伝統工芸)の担い手はいても、現代の地域活動に必要な経営、IT、情報発信、企画運営といったスキルを持つ人材が不足している。
- 活動への参加障壁: 日々の仕事や生活に追われ、地域活動に参加する時間や精神的な余裕がない人が多い。また、既存の人間関係に入りにくさを感じる人もいます。
- 活動の持続性: せっかく育った担い手が、活動の成果が見えなかったり、適切な評価が得られなかったりすることで意欲を失い、活動から離れてしまうことがあります。
これらの課題に対し、どのように向き合い、人材を確保し、育て、そして定着させていくかが、地域創生を持続可能なものとする鍵となります。
地域内での人材育成アプローチ
地域内の人材を育成することは、地域の課題を理解し、地域に根ざした活動を展開できる担い手を育む上で非常に重要です。
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スキルアップ講座・ワークショップの実施: 地域の課題解決に必要なスキル(例:SNSでの情報発信、イベント企画・運営、会計処理、クラウドファンディング活用法など)に関する実践的な講座やワークショップを企画します。専門家を招いたり、地域内で既にそのスキルを持つ人を講師としたりする方法が考えられます。地域住民や若者が気軽に学べる機会を提供することが大切です。
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OJT(On-the-Job Training)とメンター制度: 実際の地域活動や事業に、経験の浅い人や若者が関わる機会を作り、OJTを通じて実践的なスキルを身につけてもらいます。経験豊富な地域プレイヤーや行政担当者がメンターとなり、活動のノウハウや心構えを伝えることで、活動への定着を促します。
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小規模プロジェクトでの実践機会提供: いきなり大きな事業を任せるのではなく、地域の小さな課題を解決する小規模なプロジェクトを立ち上げ、そこに意欲のある住民がチームを組んで挑戦する機会を提供します。成功体験を積むことで自信がつき、より大きな活動へのモチベーションにつながります。
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地域内交流イベントの開催: 世代や立場の異なる地域住民が、活動の垣根を越えて交流できる場を設けます。こうした交流を通じて、新たな視点やアイデアが生まれたり、互いの得意分野を知り、連携が生まれたりすることがあります。
地域外からの人材確保・連携アプローチ
地域内の人材育成と並行して、地域外からの多様な人材を呼び込み、連携を深めることも有効な手段です。
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移住・定住促進との連携: 地域創生事業と連携し、事業で必要とするスキルや経験を持つ人材に対し、移住・定住の情報を提供するだけでなく、仕事や活動の場を具体的に提示します。地域の魅力だけでなく、「どんな貢献ができるか」を示唆することが、意欲ある人材の誘致につながります。
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プロボノ・副業人材の活用: 都市部に住む専門スキルを持つ人材で、地域貢献に関心のあるプロボノワーカーや副業を希望する人とのマッチングを試みます。オンラインでの協働も可能になりつつあり、地理的な制約を超えた連携が期待できます。
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学生との連携(インターンシップ、共同研究): 大学などと連携し、学生の長期・短期インターンシップを受け入れたり、地域の課題をテーマにした共同研究やゼミ活動を誘致したりします。学生の若い感性や専門知識は、地域活動に新しい風を吹き込みます。卒業後に地域への移住につながる可能性もあります。
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ワーケーションを通じた関係構築: 地域での滞在中にリモートワークを行いながら、地域活動にも関わるワーケーションを推進します。単なる観光とは異なり、地域住民との接点が生まれやすく、将来的な関わりや移住のきっかけとなることがあります。
育成・確保した人材が活躍・定着するための環境づくり
人材を「呼んで終わり」「育てて終わり」ではなく、地域に根差し、継続的に活動してもらうための環境づくりが不可欠です。
- 活動場所・機会の提供: 安心して活動できる場所(例:コワーキングスペース、コミュニティカフェ)や、多様なスキルや興味を活かせる具体的な活動機会を提供し続けます。
- 関係性の構築支援: 地域住民との円滑な関係構築を支援する仕組み(例:ウェルカムプログラム、交流イベントへの誘い)を用意します。
- 「仕事」と「活動」の両立支援: 地域での活動だけで生計を立てることは難しい場合が多いため、地域内で働く場所を確保したり、複数の仕事や活動を組み合わせる「ポートフォリオワーカー」を支援したりします。
- 適切な評価とフィードバック: 担い手の貢献を認め、活動に対する適切な評価や感謝を伝えることは、モチベーション維持のために重要です。行政や既存の住民だけでなく、関わる人々全体で支える意識が求められます。
まとめ
地域創生における担い手不足は複雑な課題ですが、地域内での計画的な人材育成と、地域外からの積極的な人材確保・連携を組み合わせることで、解決の糸口を見出すことができます。どちらか一方だけではなく、両輪で進めることが効果的です。
特に重要なのは、育成・確保した人材が「この地域で活動したい」「この地域にいたい」と思えるような、温かく、受け入れ態勢のある地域コミュニティを培っていくことです。行政、地域プレイヤー、そして既存の住民一人ひとりが、新しい担い手に対して心を開き、共に地域を創っていく姿勢を持つことが、何よりも大切な基盤となります。
皆様の地域では、担い手不足に対しどのような取り組みを行われていますか? 育成や外部連携で成功・失敗した事例、あるいはこれから挑戦したいアイデアなどがあれば、ぜひコミュニティで共有し、共に学びを深めていきましょう。